診療部門のご案内Departments and Divisions 整形外科

はじめに

当科は群馬大学整形外科学教室の関連施設として、昭和55年6月に病棟数29床・医師3名でスタートし 、現在では46床・医師5名に増え、整形外科一般、すなわち先天性のものから変性疾患(老化に伴う不具合)、あるいはスポーツ傷害や交通事故・労働災害等による障害はもちろんのこと、県内の手の外科の基幹病院としての役割を担っています。
上肢の機能再建を目的とする手の外科を専門領域としており、他の病院で手の負えない重度の手の傷患者(手指の切断や挫滅など)や、血行再建や知覚再建を要する外傷などの患者さんが多く紹介されて受診し、入院患者の6割、手術患者の8割、緊急手術のほとんどが手の外科の患者さんです。
手術は、主に切断された指などを顕微鏡下に血管、神経、腱等を修復してつなげる切断肢指再接着術、あるいは障害に対する機能再建術など手の外科の手術が大部分で、一般整形外科疾患を含めると手術件数は年間1000件に達しています。

診療内容

整形外科は四肢(肩から手指まで、骨盤から足趾まで)及び脊椎(背骨)といった運動器を扱う科です。したがって、手指などのちょっとした切り傷でも整形外科が専門です。他にも、うちみ・いわゆる突き指、骨折などもすべて整形外科が専門です。
上肢の機能再建を目的とする手の外科を専門領域としていますが、整形外科一般、すなわち先天性のものから変性疾患(老化に伴う不具合)、あるいはスポーツ傷害や交通事故・労働災害等による障害、関節リウマチ、骨粗鬆症等の患者さんも診療しています。

特徴

リハビリ重視

日常診療では、疾患に対する患者さんの理解とADL(日常生活動作)回復のための機能訓練(リハビリテーション)を重視する診療を目指しております。そのため、注射や薬のみといった「その場限り」的な治療よりも、長い目で見て「痛みにくくなるようにする、再発しないようにする」ための治療を重視しています。そのためには患者さんにも「受け身のリハビリ」ではなく、「自らが積極的に行うリハビリ」をしてもらえるように理解を求めています。当院の経験豊富なリハビリスタッフと連携をとりつつ治療をすすめています。

手の外科・ハンドセラピィ(手のリハビリ)

当科は上肢の機能再建を目的とする手外科を専門領域としており、他の病院で手の負えない重度の手の外傷患者(手指の切断や挫滅など)や、血行再建や知覚再建を要する外傷などの患者さんが多く紹介されて受診し、外来・入院患者の半数近く、手術患者の7~8割、緊急手術のほとんどが手外科の患者さんです。具体的には、手指・足趾の切断・挫滅、手指の血管・神経・腱の損傷・骨折・脱臼、手指のしびれや痛み、手指・手首・肘等の動きの制限(拘縮・麻痺)、などが対象になります。

手指の怪我は、指の切断を例にとっても、どの指の切断なのか?指のどの部位の切断なのか?切断のされ方はどうなのか?他の指に怪我があるのか?利き手なのか?どういう仕事をしているのか?年齢・性別は?などにより手術の時にゴールを設定し、またその後のリハビリの進み具合によりそれを修正しながら二次的・三次的手術を計画していく、という過程に専門的な判断と技術が必要です。当院の整形外科医は、日本手外科学会認定手外科専門医および、手外科を研修している医師ばかりですので、安心して委せていただけると思います。また手外科の治療にはリハビリが不可欠ですが、当院のリハビリスタッフ全員がハンドセラピスト(手専門の療法士)としての経験が豊富で、絶えず医師と情報交換しながら治療にあたっています。県内でこれほどハンドセラピストが充実している病院は他にありません。

また前橋救急本部の要請により、県内および北埼玉の各救急本部から再接着が必要と思われる患者さん限定で当番医直通の携帯電話に連絡が入る24時間オンコール体制をとっています(ただし常に院内で日当直をしているわけではありません)。

マイクロサージャリー(顕微鏡を用いての手術)

手外科の手術には高性能の顕微鏡を必要とすることもあります(マイクロサージェリー)。当院にはそのような顕微鏡が2台あり、スタッフも多いことから、状況が許せば顕微鏡を要する手術を並行して行うこともできます。

 

関節鏡視下手術(関節鏡を用いての手術)

手関節・肘関節用の関節鏡を備えており、必要に応じて行っております。

筋電計・MRIによるしびれや麻痺の診断

手のしびれや麻痺の診断にはMRIや筋電計(筋電図・神経伝導速度・体性感覚誘発電位等)を用いて神経や筋肉のどこにどのような異常があるかを調べることがあります。筋電計を備えていても検査を技師に任せている病院がほとんどですが、結果の数値そのものだけでなく、その出方といった数値に表れないことも判断材料となるなど結果の解釈にかなりの経験が必要です。当院では治療にあたる医師自らが検査を行い、治療に役立てています。

顕微鏡を用いたシャントの作成・修理

当院腎臓内科と協力して、透析が必要な患者さんにシャントを作成や、その修理を行っています。
最近は透析が必要となる患者さんの高齢化や、透析の進歩による透析の長期化等により、血管の状態が不良な場合(動脈硬化等)も多く、顕微鏡を用いて少しでも状態のよいシャントを作ることを心懸けています。

診療実績

DPCコードに基づく治療実績(2019年度)

公表されているDPCコードに基づく当院の治療実績を群馬県・全国で比較してみると、上肢疾患・外傷のほとんどが群馬県では1位もしくは2位であり、全国でみてもトップクラスの症例数を誇っています。

DPCコードに基づく治療実績(2019年度) 群 馬 全 国
上肢末梢神経麻痺 手根管開放術等 1位

5位

手関節症 2位  
骨折変形癒合、癒合不全などによる上肢変形 1位 11位
その他の筋骨格系・結合組織の疾患 2位
手関節周囲の骨折・脱臼 1位 21位
前腕の骨折・脱臼

3位

肘関節周囲の骨折・脱臼

2位

25位

上肢以外でも、「脊椎骨粗鬆症」は群馬県1位で、うち「手術なし」でも群馬県1位、全国でも21位の症例数でした。
また、「股関節・大腿骨近位の骨折」自体は群馬県10位でしたが、うち「手術なし」では群馬県3位、全国でも21位の症例数であり、当院が循環器疾患や、透析等の合併症を抱える、手術のできないハイリスク患者が多いことを反映しているものと考えられます。

DPCコードに基づく治療実績(2019年度) 群 馬 全 国
脊椎骨粗鬆症 1位 35位
脊椎骨粗鬆症 手術なし 1位 21位
股関節・大腿近位の骨折 手術なし 3位

21位

疾患別入院患者数

患者数 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
上肢 手術例 539 60.1% 516 61.6% 539 58.5% 593 62.5% 553 60.1% 558 60.2%
非手術例 21 2.3% 28 3.3% 13 1.4% 31 3.3% 27 2.9% 43 4.6%
上肢小計 560 62.4% 544 64.9% 552 59.9% 624 65.8% 580 63.0% 601 64.8%
下肢 手術例 110 12.3% 108 12.9% 116 12.6% 116 12.2% 114 12.4% 112 12.1%
非手術例 90 10.0% 74 8.8% 81 8.8% 79 8.3% 93 10.1% 72 7.8%
下肢小計 200 22.3% 182 21.7% 197 21.4% 195 20.5% 207 22.5% 184 19.8%
脊椎 手術例 1 0.1% 1 0.1% 1 0.1% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%
非手術例 134 14.9% 108 12.9% 168 18.2% 127 13.4% 132 14.3% 142 15.3%
脊椎小計 135 15.1% 109 13.0% 169 18.3% 127 13.4% 132 14.3% 132 14.3%
その他 2 0.2% 3 0.4% 4 0.4% 3 0.3% 1 0.1% 0 0.0%
整形合計 897 100.0% 838 100.0% 922 100.0% 949 100.0% 920 100.0% 927 100.0%

疾患別手術数

部位 病  名 手術術式 2014 2015 2016 2017 2018 2019
上肢 先天奇形 多指症・合指症手術 4 6 2 3 6 4
末梢神経障害(手根管症候群など) 神経剥離・腱移行術 160 101 103 122 93 114
関節リウマチ 滑膜切除・関節形成術 2 1 6 7 72
変形性関節症など(TFCC損傷含む) 鏡視下手術・尺骨短縮術・関節固定術・授動術など 19 27 19 22 18 27
化膿性疾患 郭清・関節固定術など 4 3 2 2 5 7
腱鞘炎(バネ指など) 腱鞘切開・滑膜切除術 143 120 80 123 95 109
外傷 骨折・脱臼 観血的整復内固定術 127 147 138 172 149 166
月状骨脱臼 観血的整復内固定術 1 1
靭帯損傷 靱帯縫合術・靭帯再建術 9 7 9 10 12 9
変形治癒 骨切り矯正術・骨移植術など 2 6 3 8 5 4
偽関節 偽関節手術・骨移植術・人工肘関節置換術 8 6 15 19 12 8
槌 指 腱縫合・石黒法など 38 33 35 36 42 37
ボタンホール 腱縫合など 3
手指locking 観血的整復 1 4 1
切断・不全切断 再接着・断端形成など 16 28 25 23 27 18
挫 滅 再接着・断端形成など 15 14 11 19 14 9
手の神経損傷 神経縫合・剥離術 11 8 2 7 8 5
手の腱損傷 腱縫合・移行・移植術 28 27 21 19 19

23

熱傷・熱傷瘢痕 植皮、瘢痕形成など 3 1 1
フォルクマン拘縮 筋膜切開、解離術、腱移行術など
その他外傷 創縫合、異物除去など 6 5 5 3 5 9
骨軟部腫瘍(ガングリオンを含む) 摘出術 44 49 73 44 49 40
特殊な疾患 Dupuytren 腱膜切除 6 10 12 14 8 6
Kienbock 橈骨短縮術 2 3 1 1 3
野球肘 遊離体切除・骨釘移植術・靭帯再建術など 4 2 2 1 4 1
術  後 抜 釘 158 144 159 165 182 168
創閉鎖・植皮・皮弁 13 6 10 8 8 11
瘢痕形成・defatting 4 8 3 3 2 3
再固定・再縫合・再吻合 2 1 1 3
授動術・腱剥離 9 13 19 9 12 14
関節固定術 3 1 3 1 1
神経剥離 2 2 2
機能再建術(腱移行等) 3 1 3 4 2 4
造母指・造指・母指化術等 1 2
断端形成・切断 5 11 9 10 14 7
術後その他 1
その他(陥入爪、ASOなど) 爪形成術など 2 1
上肢小計 852 794 780 853 802 809
80.8% 82.3% 80.2% 82.8% 82.6% 82.6%
下肢 先天奇形 多趾症・合趾症手術 1 1
末梢神経障害 神経剥離・腱移行術 1
変形性膝関節症・リウマチ・骨頭壊死など 関節鏡視下手術・人工膝関節置換術など 2 5 3 2 5 2
化膿性疾患 郭清・切断術など 3 4 6 1 1
外傷 骨折・脱臼 観血的整復内固定術 77 71 76 84 80 80
靭帯損傷 靱帯縫合術
変形治癒 骨切り矯正術・骨移植術
偽関節 偽関節手術・骨移植術
アキレス腱断裂等 腱縫合術 4 4 11 8 3 5
挫 滅 腱縫合術など 1 1 1 1 1
趾切断 断端形成術など
熱 傷 植皮、瘢痕形成など 1
外傷その他 創縫合、異物除去など 4 1 2 1 4
血管病変 閉塞性動脈硬化症 下肢切断術 3 7 7 4 1 4
糖尿病 趾切断・足部切断 12 4 3 1 3 6
骨軟部腫瘍 摘出術 3 3 4 2 3 2
陥入爪・弯曲爪 形成術 5 3 6 2 5 3
術  後 抜釘 21 14 13 17 17 20
創閉鎖・植皮・皮弁 1 2 2 3
瘢痕形成・defatting 2
再固定・再縫合・再吻合
授動術・腱剥離 1
関節固定術
神経剥離
機能再建術(腱移行等)
断端形成
術後その他
その他 1
下肢合計 136 19 135 127 124 123
12.9% 12.3% 13.9% 12.3% 12.8% 12.6%
その他 慢性腎不全 内シャント形成・動脈表在化・血管移植術など 64 49 55 45 43 47
腰椎椎間板ヘルニア 髄核摘出術
その他(体幹の軟部腫瘍など) 3 3 2 5 2 1
その他小計 67 52 57 50 45 48
6.4% 5.4% 5.9% 4.9% 4.6% 4.9%
合  計 1,055 965 972 1,031 971 980

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