医療技術部門のご案内Departments and Divisions 薬剤部

薬剤部 理念

私たち薬剤部員は、質の高い医療の提供のため日々研鑽し、薬剤に関わる安全確保に努めると共に、医療・福祉の充実と弱者救済事業を推進し社会貢献に尽くします。

 

薬剤部長挨拶

 群馬県済生会前橋病院薬剤部のホームページへお越しいただき心よりお礼申し上げます。2018年10月より薬剤部長に着任いたしました吉田仁志と申します。
 私たち薬剤部員は質の高い医療の提供のため、そして5年後・10年後の臨床薬剤師像を思い描き、日々自己研鑽し真摯に業務に取り組んでおります。
 昨今の医療体制では、チームでの医療が進められ、各職種の専門性を活かし患者さんへ最善の医療を尽くすよう努めております。そのチームの一員として薬剤師も職能を生かし、多職種協働で患者さんへ関わり、患者さんが安心して適切な薬物治療を受けられるようきめ細かく働き掛けております。私たちは医療の担い手としての「質の高い医療の提供」と「薬に関わるところ薬剤師あり」を念頭に、患者さんや地域の医療機関の皆さまへ安全な医療の提供に努めております。

薬剤部の紹介

 薬剤部は薬剤科および臨床研究支援室の2つの部門により構成されています。
 薬剤科は医薬品に関する業務を担い、「質の高い医療の提供」と「薬に関わるところ薬剤師あり」を念頭に医薬品適正使用とチーム医療、医薬品の安定供給に努めております。
 臨床研究支援室は治験・臨床研究・PMS(製造販売後調査)を全般的にサポートする業務と、新たに移植コーディネーターの業務にも取り組んでいます。
 薬剤部門は力を合わせ、安全な医療の提供と病院経営のバランスの取れたファーマシューティカルケアの提供を目指しております。

薬剤部概要 :2024年04月01日現在

薬剤科      : 薬剤師23名 (時短薬剤師1名、育休2名含む)、薬剤補助員3名
臨床研究支援室  : CRC(治験コーディネーター)2名
処方せん枚数   : 外来院内処方枚数543枚/月(2023年度)、538枚/月(2022年度)
           外来院外処方枚数4,550枚/月(2023年度)、4,388枚/月(2022年度)
院外処方せん発行率: 89.3%(2023年度)、89.1%(2022年度)
薬剤指導件数   : 898件/月(2023年度)、868件(2022年度)
資格       : 日本病院薬剤師会 がん薬物療法認定薬剤師 1名
           日本病院薬剤師会 感染制御認定薬剤師 1名
           日本病院薬剤師会 日病薬病院薬学認定薬剤師 13名
           日本薬剤師研修センター 認定薬剤師 3名
           日本薬剤師研修センター 認定実務実習指導薬剤師 3名
           日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療認定薬剤師 1名
           日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療専門薬剤師 1名
           日本腎臓病薬物療法学会 腎臓病薬物療法認定薬剤師 1名
           日本腎臓病協会 腎臓病療養指導士 1名
           日本静脈経腸栄養学会 NST専門療法士 2名
           日本循環器学会 心不全療養指導士 1名
           日本DMAT隊員 1名
           認定スポーツファーマシスト 1名
           日本臨床薬理学会認定CRC(治験コーディネーター) 2名
           日本造血細胞移植学会 移植コーディネーター 1名

薬/薬連携、多職種連携への取り組み

前橋市西地区 薬/薬連携の会
          2021年   2月 「糖尿病治療について」「疑義照会の簡素化」
          2021年   8月 「多職種医療連携セミナー~トレーシングレポート~」
          2021年 10月 「薬/薬連携セミナー~疑義照会の簡素化~」
          2021年 10月 「薬/薬連携セミナー~連携充実加算~」
          2021年 12月 「薬/薬連携研修会~抗がん剤プロトコール紹介~」
          2022年   3月 「薬/薬連携研修会~吸入療法を中心に~」
          2022年 11月 「薬/薬連携研修会~抗がん剤プロトコール紹介~」
          2023年   3月 「薬/薬連携研修会~血液疾患~」
          2023年 10月 「薬/薬連携研修会~抗がん剤プロトコール紹介~」
          2023年 12月 「薬/薬連携研修会~心不全~」

薬剤科の紹介

 薬剤科は医薬品に関する業務を担い、「質の高い医療の提供」と「薬に関わるところ薬剤師あり」を念頭に、医薬品適正使用とチーム医療、医薬品の安定供給に努めております。
 業務内容は ① 調剤業務、② 製剤業務、③ 医薬品管理業務、④ 医薬品情報管理業務(Drug Information:DI)、⑤ 薬剤管理指導業務、⑥ 病棟薬剤業務、⑦ チーム医療、⑧ 教育、⑨ 研究を行い、薬剤師の職能を活かし高度化・多様化する新たな病院薬剤師業務を充実させています。

①調剤業務

 適切な薬を安全に使っていただくために、薬剤師は処方箋の内容の確認を行った上で、調剤を行います。年齢や体重、副作用歴、薬歴や病歴の情報、検査データ等確認し、患者さんの状態に適した薬剤・投与量であるか、相互作用、投与方法・投与速度・期間等適正であるかの薬学的チェックを行います。
 注射薬は注射薬自動払出システム(アンプルピッカー)を使用して、患者個々に1施用毎にセットしております。更に注射薬では配合変化を含めた薬学的チェックを行うことで安全・安心な投薬に努めております。
 当院は平成26年1月より電子カルテが導入され、これを機にレジメンシステムを使用し抗がん剤治療における安全な化学療法の実施に勤めることが可能となりました。
 令和4年7月からは、医師業務負担軽減の推進からPBPMの一つとして「処方修正プロトコール」を作成し運用を開始しました。処方修正プロトコールは各々の医師と契約を交わし実施されております。

②製剤業務

photo 製剤業務は、市販されていない医薬品や特殊な治療、特定の患者の病態に合わせた適切な剤形への調整を薬剤師の学識・技能を駆使して独自に製剤しています。患者個々のニーズに合わせたオーダーメードの対応であり、その種類も20種類を数えます。この様な特殊な薬剤は、院内の倫理委員会の承認を得て「院内製剤」として製剤しています。
 また、クリーンベンチや安全キャビネットを使用して、骨髄移植患者における薬剤の無菌的調製や注射抗がん剤の調製を行っています。令和5年8月からCSTD(閉鎖式薬物移注システム)を全面的に使用を開始しより安全な環境を整えました。

③医薬品管理

 当院で使用されている医薬品は1500品目以上で、1年の購入額は約18億円もの金額になります。この医薬品の在庫量の適正化を図るため、薬剤科では毎日、発注・検収・入庫・保管・出庫・供給の管理を行っています。
 また、院内薬品の適正管理のため各部署の担当薬剤師により、毎月1回(HCUは週1回)、救急カート薬およびストック薬の定期点検を実施しています。毒薬・劇薬・向精神薬、ハイリスク薬や、冷所保存、遮光保存、期限付き薬剤など、保管状況、品質管理に配慮すべき医薬品が多いため、看護部と協力し、品質低下防止や適正在庫管理に努めています。
 院内在庫量は災害時の対応が7日間行える事を考慮し備蓄しています。また、診療上必要なときにはいつでも供給できる体制を整えるよう心がけています。

④医薬品情報業務(Drug Information: DI)

 地域中核病院である当院の医薬品情報室(以下DI室)では、豊富なメーカー情報や各種データベースからの情報検索結果等が日々更新され、これらの情報を加工し専門的に評価をして、整理・保管しています。また、日々多くの医師や看護師等からの問合せに対し、迅速・正確な対応に努めています。
 薬事委員会においてもDI担当薬剤師は重要な役割を占め、経済的効果のみならず、医薬品の安全な取り扱いやエビデンスに基づいた医薬品選定の資料作りに努めています。令和2年度から薬事委員会では薬剤の整理のためフォミュラリーについて着手しました。
 副作用報告・添付文書改定等の最新医薬品情報や緊急安全性情報など医薬品の安全性に関する重要な情報を入手し場合は、速やかに院内に周知できるよう、院内ネットワークを使ったDI安全性情報をタイムリーに配信しています。また、当院は厚生労働省の「医薬品等安全性情報協力施設」に認定されています。
 情報発信では、薬事委員会結果報告や話題を満載した医薬品情報誌「DRUGDIGEST」は3ヶ月毎に、「院内医薬品集」は6ヶ月毎に改定し発行しています。
 薬剤師が最前線で活躍するために医薬品情報を的確に提供し後方支援するDI室が不可欠となりました。そのため、DI担当薬剤師は知り得た医薬品情報は、毎朝のミーティングで各薬剤師と共有し、更に昼の時間にもDIと病棟薬剤を中心としたカンファレンスを開催し、病棟薬剤業務上必要な情報や薬学的知見の情報共有を行っています。
 また、月2回の定例薬剤部勉強会も継続しておこない、症例検討を中心として各薬剤師の持ち回りで発表し、各人の資質の向上を図っております。

⑤薬剤管理指導業務

 薬剤管理指導は患者安全管理への関与として重要と考えています。入院患者さんの持参薬の確認や薬歴・使用歴・副作用歴・アレルギー歴等を確認し、薬の飲み方や副作用・効果・注意点などを説明します。薬剤によっては薬物血中濃度解析などの薬物モニタリングも行います。
 この他に、薬剤管理指導の保険診療には換算されませんが、外来通院治療センターにがん化学療法担当薬剤師が毎日常駐し、月あたり150名ほどの抗がん剤治療患者に薬剤管理指導を行っています。

⑥病棟薬剤業務病棟業務

 入院患者に対する薬物療法の質の向上に貢献するため、薬剤師の全病棟配置を行っております。病棟薬剤業務開始に伴い、薬剤師は専門的知識を活用しPBPMの一つとして「持参薬継続・退院処方:支援プロトコール」を作成して、持参常用薬の継続処方設計支援や退院時の継続薬の提案処方をオーダ入力し医師が活用できるシステムを開始した。現在は薬剤師の業務として定着しています。これらの業務は、医師業務のタスクシェア/シフティングになり医師の働き方改革に有用とされ、更に薬剤の適正使用および医療安全の観点から患者安全に直結するため重要業務となっております。
 その他、チーム医療の遂行により医療従事者からの相談応需件数も増加しました。
 病棟では、医師・看護師、そのほかのスタッフ等とカンファレンスをおこない情報共有し、チームとして連携をとり治療の質的向上に取り組んでいます。

⑦チーム医療

 薬剤師は、入院患者さんがより安全で有効な薬物治療を受けられるように、医師・看護師、その他の医療スタッフとともに医療チームの一員として取り組んでいます。
 ・ICT(感染制御チーム)AST(抗菌薬適正使用支援チーム)
 ・NST(栄養管理サポートチーム)
 ・褥瘡スキンケアチーム
 ・緩和ケアチーム
 ・がん化学療法チーム
 ・糖尿病支援チーム
 ・心不全チーム
 ・DMAT(災害派遣医療チーム)

⑧教育

 院内職員への教育としては、医薬品の安全使用のための責任者(医薬品安全管理責任者)が、「医薬品の安全使用のための業務に関する手順書」を作成し、現状に則した院内研修会を実施している。薬のリスクマネジメントとして、その他にも、看護師対象の講義「看護のための薬学講座」「輸液と注射薬の取り扱い」等も毎年開催している。また、各病棟担当薬剤師による病棟単位での勉強会や、専門領域の薬剤師による勉強会も随時行われています。
 薬学生への教育では、長期実務実習受け入れに際し必要となる、日本薬剤師会の実務実習指導薬剤師が3名認定しており、充実した実務実習の教育とともに指導薬剤師の養成と各人のスキルアップも行っています。
 専門分野での薬剤師の育成では、がん薬物療法のエキスパートである「がん薬物療法認定薬剤師」が1名、「外来がん治療認定薬剤師」が2名、感染制御に関する薬剤師の専門性を評価した「感染制御認定薬剤師」が1名、「抗菌化学療法認定薬剤師」が1名、腎臓領域では「腎臓病薬物療法認定薬剤師」が1名認定されています。また、薬剤師の腎臓病療養指導士として1名、栄養サポートチーム(NST)専門療法士として2名、心不全療養指導士が1名、感染制御スタッフ(ICS)として3名が認定されています。
 近隣中学校からの薬剤部職場体験希望者も年々増え続けており、薬剤師が、また病院が、安全な医療を提供するために努力している姿を学んでもらえていると考えます。令和3年度・4年度は新型コロナウイルス蔓延のため残念ですが中止となりました。
 当院医療圏の住民や患者を対象には「知っておきたい薬の飲み方・使い方」といった地域住民教育・啓蒙講演を依頼されています。

⑨研究

 忙しい業務の中でも、職務の傍ら「薬学修士」や「医学博士」取得にも努力しています。平成19年度には1名が共立薬科大学大学院医療薬学修士を、平成22年度には1名が国際医療福祉大学薬学修士を取得し、令和5年度には高崎健康福祉大学にて「薬学博士」を1名が取得しました。
 日常業務の中でも、絶えず問題意識を持ち、現状維持の容易さを捨て、些細と思われることにも注目すれば、探求すべき問題は必ずあります。そうした研究課題に取り組んだ結果が業務を通じて患者サービスに還元される事により、医療チームメイト、患者の信頼を得ることになると共に、自らの医療人としての自覚・認識が高められることにもなると考えます。

今後の展望

 当院薬剤師は、「病棟薬剤業務」の定着を確実なものとし「薬剤管理指導業務」を拡大し、「医薬品の適正使用推進」「処方設計支援」と「医薬品を使用した患者の安全管理(副作用の未然回避・重篤化回避)」を発展させ、臨床薬剤師としてチーム医療に参画しています。
 また、当院のニーズと社会のニーズにも応えられるべく、周術期への薬剤師の関与、特に術後疼痛管理についての体制を整えるための取り組みを開始しています。
 「薬あるところに薬剤師あり」を忘れずに薬剤師として薬学教育で得た薬物動態・薬理学・相互作用・副作用のメカニズムなどの知識を生かし、必要とされるところに必ず居ることができる、そんな薬剤師を育てていきたいと思います。